ハロウィンの定番アイテムといえば「ジャック・オー・ランタン」ですよね。
可愛らしい外見でハロウィンには欠かせない存在です。
一般的に魔除けのアイテムとしても広がっています。
ハロウィンはアイルランド伝統の祭り「サウィン」が元ですが、「ジャック・オー・ランタン」もアイルランドの伝承が元になっています。
元はまったく可愛くないんですけどね。
ジャック・オー・ランタンの起源
現代のハロウィンで見られるジャック・オー・ランタンはかぼちゃで作られていますが、元はカブやルタバガといわれる根菜で作られていました。
アメリカに大量のアイルランド系移民が渡った結果、アメリカにあったかぼちゃを代用品として使い、現在の「かぼちゃお化けのジャック・オー・ランタン」が出来上がりました。
カブやルタバガで作ったジャック・オー・ランタン
かなり強烈なのでお気をつけ下さい。
CC-BY-SA 3.0
これは……ヤバイな……
恐怖しか感じないわ。子供はトラウマになるレベル。
これは伝統的なやりかたで20世紀初頭にカブで作られた物です。
大昔のアイルランド「サウィン祭」ではこんなのがごろごろしてたんですね。
カブからかぼちゃへ
1840年ごろにアイルランドでジャガイモの不作が数年続き大飢饉が訪れます。
これをジャガイモ飢饉といいます。
この大飢饉でアメリカに渡ったアイルランド移民達が、現地でサウィン祭をしていた所カブよりもかぼちゃの入手が容易だったため、かぼちゃをくりぬいてランタンを作るようになりました。
以降アメリカで流行した祭りはハロウィンになり、かぼちゃのランタン「ジャック・オー・ランタン」として定着していきます。
ペテン師 スティンジー・ジャック
遥か昔、アイルランドのとある町にスティンジー・ジャック(Stingy Jack・・・けち野郎ジャック)と呼ばれる男が住んでいた。
こいつはとんでもなく狡猾で他人を騙すことが大好きなペテン師野郎だ。しかも酒が大好きでいつも酔っ払っていた。
酒のためなら人を騙して、金を盗む。良心なんてものはとっくの昔に消え失せた。
もちろんジャックの事が好きなやつなんて誰もいない。
「よっしゃ!ほな、今日も馬鹿共騙してただ酒といこか!」
そういって今日もジャックは、いきつけのパブに向かって行くのだった。
一方そのころ、人を騙すプロである悪魔たちに、一人の人間のうわさが流れてきた。
「なんや人間の中に、うちらより騙すんが上手いとか言うとるやつがおるらしいがな」
「なんやて!?それがホンマやったら、どえらいこっちゃで!」
ジャックの話題で盛り上がる悪魔たち。そのうちの一人がジャックに興味を示した。
「よっしゃ!ほないっちょ、うちが魂とってきたろやないかい!」
「お、そらええわ!ケツから手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたってや!」
こうしてジャックの元にプロのペテン師である悪魔が向かっていった。
「ははん、は~ん。今日は何の酒~飲もかな~♪……ん?」
ジャックがパブに向かう道を一人で歩いていた所、地面の上に横たわり、ジャックを見つめてにやにや笑うグロテスクな体の生物と遭遇した。
「きもっ!なんじゃこいつ!」
「儲かりまっか~?あんたの話は聞いとるでジャックはん。うちらよりよっぽどペテン師らしいなぁ~」
グロテスクな生物の話を聞いてジャックは瞬時に気付いた……。
ばあちゃんから伝え聞いてたキモイ姿……こいつまさか悪魔っちゅーやつちゃうか……!?
腐っても天才ペテン師、頭の回転は速かった。
「もも…、もしかして魂取りに来た悪魔はんでっしゃろか…?」
「お?さすがようわかっとるやないか兄ちゃん。ほんなら、さっさと魂よこさんかい」
「そ…そない殺生な!」
「兄ちゃん、あんた調子乗りすぎたんや。うちら本職のとこまで話来たんやからなぁ」
いくら音に聞こえたジャックでも、びびってもうとるし、まぁ人間ならこんなもんか…と悪魔が思っているとジャックが言った。
「わしも男や、逃げも隠れもしまへん!せやから…せやから死ぬ前にそこのパブで酒のましてください!後生や!」
「逃げたりせぇへんのやったら、まぁ酒の1杯ぐらいならええよ」
「おおきに…!おおきにやで…!」
そしてパブでエールを注文し人生最後の1杯を飲み干した。
「やべぇわ悪魔はん!わし金もってなかったんやった…」
「もう死ぬねんからええがな兄ちゃん。」
「最後くらいはきっちりさせてやぁ……せや!ペテンのプロの悪魔はんなら硬貨に変身できまへんやろか?」
「そんなもんお茶の子さいさいやで……ほれ!」
悪魔が硬貨に変身するとジャックは素早く行動します。
支払うと見せかけてポケットに入っていた十字架に、硬貨に変身した悪魔をくくり付けます。
「あぁー!元に戻られへんやんかぁ!やめてや!」
「やめて欲しかったら10年間わしの魂取りにけぇへんって誓えや!」
「わかった誓うから、はよ外してやこれー!」
こうしてジャックは悪魔を返り討ちにして10年の猶予を手に入れたのだった。
そして10年後……、外を歩いていたジャックの元に以前の悪魔が再び現れた。
「よぉ兄ちゃん!10年たったから魂もらいにきたで!」
「わかった。契約したさかい今回こそは覚悟完了やで」
騙されるのを警戒していた悪魔は、悟りきったジャックの表情と態度に驚いた。
「もっとごねてくるか思たのに、えらい素直やんけ兄ちゃん」
「へへっ、せやろ?」
「んで、そんな木の下で何しとったんや?」
「今そこの木のリンゴとって食べよう思たんやけど、登られへんから困ってたんや。ちょっと採ってきてくれへんか?」
「まぁええけど、その前に荷物検査やで。以前の二の舞はごめんやからのぉ~」
十字架も持ってなさそうな様子だったので悪魔はジャックの最後の要求を叶えてやることにした。
「木登りは腰に来るわ。おーい、このりんごでええか?」
木に登った悪魔は下にいるジャックに向けて問いかけたが、ジャックの表情を見て凍りつく。
「かかったなダボがぁー!」
なんとジャックは木の幹に十字架を彫って悪魔を木から離れられないようにしたのだ。
「あぁー!また騙したー!魂くれるっていうたやんかぁー!」
「開放されたかったらわしの魂を取らず、地獄にも行かんようにせえや、おらー!」
悪魔は条件を飲みました。ジャックは悪魔から解放されたのです。
月日は流れ、ジャックは寿命で死んでしまいます。
「とうとう死んでもうたか…、ほな天国で悠々自適の生活としゃれこもかなぁ~♪」
ジャックの魂は天国に向かってみましたが、生前のひどいペテン師ぶりに神様から天国への出禁をくらいます。
「え?ペテン師が天国入りとか、無いわぁー」
「嘘やん!」
行く当ても無いジャックは、仕方がないので地獄に向かいます。
「天国に出禁食らってもうたから、しゃーなしで地獄はいったるで?」
そこに散々騙したあの悪魔がやってきます。
「へへ、残念やけど生きとった頃のあんたとの契約で、地獄には入れまへんのやわこれが」
「なんやて!ほなわしはどこ行けばええんや!来世はどうなるんや!?」
激しく狼狽するジャックに、悪魔が冷たく言い放ちます。
「元の世界へおかえり!」
絶望するジャックは悪魔にお願いします。
「風もやばいし、めちゃ暗いから明かりくれやぁ~」
「しゃーないなぁ。ほれ、この炎もってきや。飴ちゃんもいるか?」
悪魔は地獄の燃え盛る炎をジャックにくれてやりました。
ジャックはそこらに転がっていたカブの中をくりぬくと、燃え盛る炎を中に入れてランタンとして使いました。
しかし、天国にも地獄にもいけないジャックはカブのランタンの明かりだけを頼りに、永遠に暗闇の中を彷徨い続けることになったのです。
というのがジャック・オー・ランタンの元になった伝承です。
最後に
長くなりましたが以上がジャック・オー・ランタンについてです。
魔除けだって言うのは今も昔も変わらないですね。
まぁ、可愛さっていう点では天と地ほどの差があるけどな!
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