井村君江 著 「ケルトの神話 女神と英雄と妖精と」
1983年刊行「ケルトの神話 女神と英雄と妖精と」の文庫版(1990年)
井村君江(いむら きみえ、1932年3月1日 – )は、日本の英文学者・比較文学者。ケルト・ファンタジー文学研究家。フェアリー協会会長。イギリス・フォークロア学会終身会員。明星大学名誉教授。妖精美術館(福島県大沼郡金山町)館長。うつのみや妖精ミュージアム名誉館長。
上記の経歴を見れば分かる通り、井村君江さんは日本におけるケルト研究のスペシャリストです。その知識・研究は素晴らしい限りで、幅広い知識をお持ちです。
特に妖精関係の本をたくさん出版されていて、なんと出版した本の半数以上のタイトルに「妖精」が入ってます。
ざっくり紹介
この「ケルトの神話 女神と英雄と妖精と」は僕が初めて読んだケルト関係の本。
僕はアイルランド音楽にハマって、ティンホイッスルを練習し始めたことでケルト全般に興味を持った。
でも、それまではケルトっていう言葉自体全然知らなかったし、ゲームやマンガとかに出てくる数々のケルト的キーワードを見ても、それがケルトの神話や伝承から取られたものである事にまったく気付いていなかった。
この本はそんなよく分かってない人にも向けて、ケルト民族のことやドルイド僧について等から、神話群や物語群などについても解説している。
神々の話では聞いた事がないような神だらけだったけど、所々ゲームやマンガなどでも見たことがある事に気付き、そのたびに「これだったのか」という思いと共に、読み進めるにつれて僕のテンションは上がっていった。
魔眼バロールとか、フィアナ騎士団とか。後はそう、大人気のスカサハやクー・フーリン(作中ではク・ホリン)とか、ディルムッドとかも出てくる。
そういった神話群や物語群も分かりやすく書かれている。
ゴテゴテと装飾して物語を盛り上げようとする文章ではなく、丁寧に、そして簡潔に書かれている。
だからといって面白くないわけではなく、元の物語が持つ不思議な魅力は十分に伝わってきました。
でもこの本一冊で、ケルトに関わる話の全てを知ることは不可能だ。
確かに広い範囲の物語が丁寧に書かれているが、やはりページ数的にも限界はある。神や人物、歴史や文化等についてもっと深く知るには、さらに詳しく調べる必要がある。
あとがきにも書かれてるけど、文庫本にするにあたってアイルランド語の古い発音に従って書かれていた読み方が、一般に行われている読み方に変更されている。
出来れば古代アイルランド語での読みに近い方も両方乗せて欲しかったなぁ。
ケルト関連の初心者へ
ケルトを知らない人や、ちょっとかじった程度、そんな初心者たちにこそ必要な入門書だと思う。
でも困った事に、ケルト民族に関する研究はどんどん進んでいる。冒頭に書かれた「島のケルト」と「大陸のケルト」を取り巻く状況も変わってきてるし。
まぁ情報がちょっと古くなっちゃったのはしょうがないよ。
なにせこの本が世に出たのは1983年だからなぁ。
でもその最新の研究を追いかけるのに必要な知識はかなり手に入るから、早く読んで次の本に向かうぞ!
きっとこの本を読んだら、もっと色々な事を知りたくなってくるはずだからね。
古本屋とかに行けば安く手に入るぞ。
最後に
読み終わってみたら結構知っている言葉が出てきてて驚いた。ゲームや漫画でかなり使われてるんですね。
気付いていなかっただけでした。
あとこの本の神話などはほとんどがアイルランドの神話になります。周辺の国にも色々あるんですが、現在のケルト神話と呼ばれている物の中心はアイルランドです。
他の国の神話や民話とかも気になる!
あとケルト神話に出てくる妖精の話なども気になるし、井村君江さんの本を集めていこうと思います。
というわけで、井村君江「ケルトの神話 女神と英雄と妖精と」は、幻の民であるケルト民族の不思議な魅力に触れてみるには最適な本です。
結論、自信を持っておすすめできる本です。