伝統音楽 人物列伝 「フランシス・オニール」

アイルランド伝統音楽収集家 フランシス・オニール

アイルランド伝統音楽家たちの間では知らない人はいないであろう人物がいる。

それが「Francis O’Neill……フランシス・オニール」だ。

伝統音楽を始めたばかりの頃は知らないかもしれないが、伝統音楽を続けていくと必ず耳にする機会が訪れる。それほどに有名な人物なのだ。

 

フランシス・オニールの経歴

まずは彼の経歴をざっくり知っておこう。

アイルランドコーク州トラリベインに生まれ、地元の著名なミュージシャンの演奏する音楽に囲まれて幼少期を過ごした。

16歳でイングランドの商船で船員として働き、世界一周をしたり、船が難破したりを経験した。そしてニューヨークへの航海でアイルランド系移民のアンナ・ロジャースと出会いアメリカ・イリノイ州に移住の後に結婚。

後にシカゴに移住し、警察官となる。

警察官として活躍する傍ら、シカゴのアイルランド・コミュニティで音楽活動も行っており、多くのアイルランド伝統音楽家を警察官として登用した。

最終的に警察署長になり1905年に退官。

その後は伝統音楽の収集・出版に情熱を注ぐ。

以上がオニールの簡単な経歴だ。

※もっと詳しく知りたい人は彼の伝記も出版されているので探して読むといい。日本語の物は見たことが無いけど。

 

さて、彼がアイルランド伝統音楽を語る上で欠かせない人物なのはなぜなのか。

経歴の一番最後の行を見て欲しい。そこには“伝統音楽の収集・出版に情熱を注ぐ”とかいてある。

 

フランシス・オニールはアイルランド伝統音楽家のバイブルとなる曲集を出版した人物なのだ。

 

フランシス・オニールの本

オニールは複数の曲集を出版している。主な出版物を見てみよう。

 

O’Neill’s Music of Ireland…1903年に出版され、1805曲が掲載されている。オニールの記憶から抽出された曲以外にも、収集活動に興味を持ったシカゴの演奏家が多数参加している。

The Dance Music of Ireland…1907年に出版され、1001曲が掲載されている。

よくO’Neill’s 1001(オニールの1001曲)という名前で呼ばれている。上記のO’Neill’s Music of Irelandから内容を絞り込み持ち運びの利便性を向上させたコンパクト版。大体の演奏家が持ってる。

400 tunes arranged for piano and violin…1915年に出版。400曲を収録。

 

Waifs and Strays of Gaelic Melody…1922年に出版。365曲を収録。

 

Irish Folk Music: A Fascinating Hobby…1910年に出版

Irish Minstrels and Musicians…1913年に出版。オニールの曲集に関わるミュージシャンたちの伝記。

以上が彼の手によって出版された本だ。もしかしたら他にも関わった本があるかもしれないが主だった本は上記のもので、いずれも素晴らしい本ばかり。

 

生涯の収集曲の数

彼が生涯にわたって収集した曲は約3500曲といわれている。

現代のインターネットが普及した時代ならともかく、18世紀・19世紀にこれだけの数を収集し出版した情熱に、僕は敬意を表する。

 

オニールの活動によって収集された曲集は素晴らしい物だが、一人では出来なかった。

 

集まれ!音楽の戦士たち

フランシス・オニールはあるとき、 James O’Neill(ジェームス・オニール)という演奏家と知り合った。(苗字が同じなだけで親族ではない

そしてどのような演奏からも楽譜を書くことが出来たジェームスを見て、曲集を作る案が浮かんできた。

そして本部長という地位を生かし、彼は交流の会った演奏家たちを次々警察官へジョブチェンジさせた。もちろんジェームスもだ。

そして仲間たちと共に悪と戦いつつ、楽曲の収集をしていたのだ。

 

こうした活動を知った様々な演奏家たちが彼の元を訪れ、楽器や歌で、はたまた口笛で音を奏で、収集に協力した。

 

そうして出来た曲集は、アイルランド伝統音楽を志すものにとって無くてはならない存在になっている。

 

最後に

彼の生涯を題材にしたミュージカルや銅像もあるし、音楽イベントは2013年より毎年行われている。フランシス・オニールのサマースクールも開催されていて、彼の情熱は脈々と受け継がれていく。

 

口伝えの音楽という性質により、浮かんでは消え行くアイルランド伝統音楽。

それら失われるはずの音楽を救い、後世に伝えたフランシス・オニールと仲間たちの功績は素晴らしい物だ。

 

彼の曲集に込められた伝統音楽への飽くなき情熱は、これからも消え行くこと無く、世界に広がり続けていくだろう。

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